(71)跡を絶たない駐在員とブラジル人女性のロマンス

カラオケ・バーでは、日本のどんな歌でも唄える

「アショ・ケ・ミーニャ・ジェラソン・アンテリオール・フォイ・オリエンタル..(あたしの前世はきっと東洋人だったと思う..)」

「….」

「オーメン・ジャポネース・ミ・アトライ・ムイト..(何故かあたし、日本人の男性にとっても惹かれるの..)」

着任してすぐに始めたポルトガル語の特訓レッスンのお陰で、男はおぼろげながらその意味を理解し、女を見つめた。女は上目遣いに男の顔に目をやりながら、手をゆっくりと太ももに這わせる。

やや小柄でスリムなその金髪女性は、センスのいい服を身につけ、言葉遣いはゆったりしていて、どことなく育ちの良さを感じさせる。

そこは、サンパウロのダウンタウンにあるカラオケ・バーである。日本の曲ならたいがい揃っているので、日本からの進出企業の駐在員たちがよく出入りする店だ。ママは韓国人で、10数名いる女性たちは、全てブラジル人だ。

日本人を魅了するブラジル人女性

彼女たちは皆白人系で、髪の色は金髪、茶髪、黒髪とバラエティーに富んでいて、日本人が好みそうな、いずれ劣らぬ美人揃いだ。

「エ・プリメイラ・ヴェス・ノ・ブラジル?(ブラジルは初めて?)」と、女性。

「シン、トレース・メゼス(うん。3ヶ月になる)」男が覚えたてのポルトガル語で応える。

「ゴストウ?(ブラジル、気に入った?)」

「シン、ムイト(うん、とても)」

♪♪コモ・エスタ・セニョール、コモ・エスタ・セニョリータ♪♪.....隣のボックスの客が、ステージに上がり、マイクを持って「赤坂の夜」を、慣れた調子で唄い始めた。

「ヴァモス・ダンサール(踊りましょ)」と、女が誘う。

「....」

「ヴァモス!(さあー!)」と、女に手を引かれた男は、戸惑いがちに立ち上がり、フロアーに向う。

女はしなやかに腰を揺らし、ゆっくりとしたステップで男をリードする。男の緊張が次第にとけて、何とかステップを合わせ始めると、女はスッと身体を密着させ、頬を寄せてくる。甘い香りが男の鼻をくすぐり、女の腰に回した腕に思わず力がこもる。

曲が終わり、手をたずさえてボックスに戻ったカップルの親密度は、既に急上昇している。

このようにして単身赴任の駐在員と、ブラジル人女性のロマンス・ストーリーが幕を開ける。

男が同僚と一緒に、再びカラオケ・バーに姿を現すのに時間はかからない。女は満面の笑顔で出迎え、いとおしそうに男の手を両手で包み込む。

ボックスに腰を沈めると、前回キープしたジョニ黒のボトルが、つまみと一緒に運ばれてくる。

飲むほどに酒はアドレナリンの分泌をうながし、女に勧められるままに、メニューから選曲した男は、女に導かれてステージに上がる。「♪白樺~、青空~、南風~、こぶし咲くあの丘北国の~、北国の春…♪」 男の少ないレパートリーの中で、何とか唄える曲だ。

女は男が唄う間、そっと側に寄り添い、唄い終わると、その出来映えに関係なく、男を見つめながらやさしく拍手を送る。

続いて、カラオケ好きと見える男の同僚が ♪can’t help fallin’ in love….♪ と歌い始めると、二人はどちらからともなく立ち上がり、ダンスを始める。男のステップには前回のような戸惑いはなく、最初から大胆に身体を女に密着させる。

「ヴォッセ・エ・ムイト・シャルモーゾ(あなたって、とってもチャーミングだわ)」

唇を寄せた女が、熱い息を吹きかけながらささやく。男の鼻の下が、たちまち数センチ伸びる。

3度目は、男は一人でカラオケ・バーに現れる。金曜日の夜だ。女との親密度はさらにエスカレートし、男の帰り際に電話番号が記されたメモが、ソッと手渡される。

翌日、電話で夕食の約束を取り付けた男は、心を躍らせながら日本料理のレストランで女を待つ。15分ほど遅れてきた彼女は、薄化粧で清楚なドレスを身にまとい、カラオケ・バーでの雰囲気とは違っていて、まるで別人のようだ。

「エウ・ゴスト・ムイト・デ・コミーダ・ジャポネーザ(あたし、日本食がだあーい好き)」女は器用に箸をあやつって、刺身を口に運ぶ。

レストランを出ると、ワインのせいでほんのり頬を染めた女が、ハンドルを握る男に、手ぶりを交えて目的地に誘導する。間もなく車は、高級ラブホテルのゲイトをくぐる。

部屋に入ると女は遠慮がちに男の唇を求め、何事かつぶやきながら、次第に息を弾ませてゆく。男は上着を脱ぎ捨て、はやる心を懸命に抑えながら、さらなる女のイニシアティブを待つ。

女は恥らうようなそぶりで男に背を向け、ドレスを脱がせるように催促する。ドレスの下は、すぐにブラジャーだ。男は震える手でホックを外す。弾力のある乳房がプルンとこぼれ出る。それはお椀型ではなく、男が見たことも無い立錐型だ。桃色の小さな乳首は、既に硬くとがっている。

それを境に、女の行動は次第に積極性を増してゆく。男のシャツを脱がせ、ベッドに身を沈めて腕を広げ、やさしく男を誘う。それから先は、言葉は不要だ。

結婚してから既に10年を経ているにも関わらず、男は未知の、そして想像を遥かに絶する、究極の快感を味わうことになる。

2時間後に一息ついた男は、ブラジルを訪れた日本人の男性が、皆一様に抱く思いを、感動と共にかみしめていた。

「今までの...過去のセックスは一体何だったのだろう...」

一度味わった甘美な禁断の果実は、麻薬のように男を虜(とりこ)にする。

日本企業の駐在員がブラジルに滞在する期間は、平均3年だ。最初は単身赴任だが、間もなく家族がやってくる。それでも男は妻には内緒で、甘美な果実を味わい続ける。

親密の度合いが深まった頃に、女は男に車をねだる。そして次には、小さなマンションの購入をせがむ。女の魅力にハマッてしまった男にとって、その潮時を見極めることは容易ではない。

駐在員に対する日本企業の給料システムは、本給は日本の口座に振り込まれ、ブラジルでの給料は別払いになるため、現地における懐には余裕があるので、女の要求を拒み切れない駐在員が結構多い。女は3年の間、優雅な生活が保証されるという訳だ。その間に、下手して妊娠でもさせてしまったら、車やマンションだけでは済まない。帰国した後も、子供が成人になるまでの養育費を送金させられるハメになってしまうからだ(そんなケースは少なくない)。

男が帰国してしまうと、女は次のカモを狙う。カラオケ・バーは格好の狩場だ。こうして、日本人を落とす手練手管を知り尽くした女は、次々と駐在員をとっかえひっかえし、女盛りが過ぎる頃には、しっかりと安定した生活を手に入れている。

カラオケ・バーの経営を始めて18年になる韓国人のママは、そんな女性たちと日本人駐在員のロマンスを、数え切れないくらい見てきたという。彼女によると、そんなケースはまだ序の口で、奥さんと別れてブラジル人女性と一緒になった駐在員や、女性が、帰国した駐在員を、日本まで追いかけていったケースも珍しくないという。

男女が逆の場合もある。ゴルフにハマッてしまった駐在員の奥さんが、平日からゴルフ場に入り浸り、キャディーのブラジル人男性とネンゴロになって、駆け落ちをしてしまったケースもある。

世界一セクシーといわれるブラジル人女性

いづれにしても、世界有数のセックス先進国ブラジル(参照:http://2palit.us/z9Ldte)の男女は、セックスに関しては後進国から来る日本人を魅了してやまない。

ブラジルにおける、駐在員がらみのロマンス・ストーリーは、これからも跡を絶たないであろう。   (完)

mshoji について

兵庫県神戸市出身。1960年、県立神戸高校卒業後にブラジルに単身移住。サンパウロ・マッケンジー大学経営学部中退。貿易商社、百貨店でサラリーマンを経験後に独立。保険代理店、旅行社、和食レストランの経営を経て、現在は出版社を経営。ブラジル・サンパウロ州サントス沖グアルジャー島在住。趣味:ゴルフ、乗馬、社交ダンス、カラオケ、読書、料理。twitter:@marcosshoji
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