(107) フジコ・ヘミングに見る高齢者の挑戦

私は、夕暮れ時のメランコリーな時間帯に、水割りを飲みながらピアノの曲を聴くことを、趣味の一つにしている。 以前は「黄昏時のピアノ・シリーズ」のCDを買い集めて聞いていたが、最近はブルー・トゥースで、YouTube musicをホーム・シアターに接続すると、音声だけでなく映像も見れるので、もっぱらその方法で黄昏のピアノ鑑賞を楽しんでいる。

ある日、You Tube で見つけた、有名ピアニスト9名による“ラ・カンパネーラ”の競演を聴いていて、初めて「フジコ・ヘミング」というピアニストの存在を知った。それからインターネットで、さらに詳しく彼女について調べ、その数奇な人生に興味を持った。

曰く「フジコ・ヘミングは、ヨーロッパにピアノ留学をしていた日本人の母親が、現地で知り合い、結婚したスエーデン人男性との間に、1932年にベルリンで生まれたハーフ。幼少期に来日し、6才から母親のスパルタ教育を受けて、ピアニストの道を歩み始める。35才でヨーロッパに渡り、聴力を失うなど、どん底の人生を歩みながらも、ピアノへの情熱を失わず、60才を過ぎて日本に帰国。1999年1月にNHKに「フジコ・あるピアニストの軌跡」でとりあげられてプレイク、あっという間に日本はもとより、アメリカ、ヨーロッパで引っ張りだこのピアニストになった。彼女は“魂のピアニスト”と呼ばれ、その独特の奏法は、多くのピアノ・ファンを魅了してやまない。ちなみに、彼女は17才の時、中耳炎で右耳の聴力を失い、さらにヨーロッパ滞在中に、風邪のために左耳の聴力も失ったが、現在は左耳のみ40%回復している。」

彼女は、87才になった今でも現役で多くのリサイタルに出演し、その優雅なピアノ演奏で、聴衆を魅了しているという。





演奏するフジコ・ヘミング

「ラ・カンパネーラ」の9名競演ビデオがアップされたのは、彼女が83才の時で、9名の中に、もう一人の日本人ピアニスト、辻井伸行(当時27才)が含まれてる。彼は生まれながらの盲目で、その演奏技術は神業ともいわれ、今や世界を代表するピアニストである。 私は、ピアノを弾かないので、演奏技術については全くの無知であるが、二人の演奏は、奏風こそ違え、いづれも耳と心に快く響く。グランドピアノの鍵盤数は88と決まっているそうだが、その同じ数の鍵盤を使って、83才と27才の二人が、甲乙つけがたい見事な演奏を披露していることに、いたく興味をそそられた。

人間は、高齢になると自律神経が衰えるという。すなわち、脳が身体に出す動作の指令と、身体が実現する動作の結果に、高齢になると差が出る。ピアニストの場合、柔らかいタッチと力強いタッチの組み合わせで一つの演奏が成り立っているとすると、80才を過ぎた高齢者になると、脳が指令した柔らかいタッチと、指が鍵盤をタッチする柔らかさに、差が出て当然であろう。ところが、フジコ・ヘミングの、聴く人の耳と心に届く、絶妙の柔らかいタッチは、全く年齢を感じさせず、正に驚異に値する演奏技術であると思われる。

彼女は、どのようにして自律神経の若さを保っているのであろうか?恐らく、日常生活で厳しく自己管理し、毎日の練習を欠かさないことに加え、ピアノに対する向上心と情熱を今でも失っていない、と想像される。

私は、ゴルフをたしなむが、実はゴルフも自律神経の機能が結果を左右するスポーツである。多くの人たち(ゴルファー及び否ゴルファー)は、ゴルフはボールを「遠く」へ飛ばすことを競うスポーツと勘違いしているフシがある。ところが実は、ゴルフはボールを「近く」に運ぶことを競うスポーツなのだ。他の多くのスポーツがそうであるように、「体力」を競うスポーツではないので、高齢者ゴルファーが、若者と対等に戦える、(多分)唯一のスポーツなのである。 ピアノの鍵盤が88と決まっているように、ゴルフのコースは、18ホール、パー72(または71)、距離は最低6000ヤードで、使う道具は14本のクラブと決まっており、年齢に関係なく、同じ条件でプレーする。そのプレーの過程で、「遠く」が要求される打球は、ティーショットと呼ばれる出だしの一打のみで、全打球数に占める割合は、わずか15%(プロは20%)に過ぎない。すなわち85%が「近く」への打球を要求されるのである。自律神経が、重要視される所以である。

例えば、目標とするピン(旗竿)まで100ヤードあるとする。目測した距離は脳に伝わり、脳は身体に100ヤードの距離を打つことを指令する。ゴルフの能力とは、この100ヤードを身体がどれだけ正確に実現できるかどうかなのである。

平均的なアマチュア・ゴルファーのスコア-(全打球数)を90打とすると、150ヤード以下の距離を打つ割合はその約70%で、さらにその半分は、パターと呼ばれる、グリーン上で20ヤード以内を転がす打球である。すなわち、ゴルフに「力」は必要ないのだ。身体能力が衰えた高齢者でも、自律神経の若さを保っていれば、若年ゴルファーと、対等に戦えるスポーツなのである。

Torneio ABGS 27/03/2015 – Campeção Scratch

 私が、このことに気付いたのは65才を過ぎてからで、それ以降、平均スコア-にほとんど変わりがなく、ハンディキャップも30台の頃と変わっていない。お陰様で、自分より30~40才も若いゴルファーたちと対等に、プレーを楽しんでいる。

私が、フジコ・ヘミングに共感するのは、彼女の生き方こそ、私が求める理想の高齢者の姿であるからだ。それは、日常生活での自己管理を怠らず、毎日の練習を欠かさず行い、常に向上心と情熱をもって、高齢者の可能性に挑戦する姿勢である。

ゴルフでの快挙の一つに「エイジ・ショット」というのがある。18ホールを自分の年令と同じかそれ以下のスコア-で回ることで、私は74才で最初の「エイジ・ショット」を達成してから、その後4年間で47回ゲットしている。しかしこれはあくまでも進行中の数字であって、ぜひ100回を達成したいものだと思っている。

池が多く正確なショットが要求されるグアルジャー・ゴルフクラブ’

私は、アマゾンで購入したフジコ・ヘミングのCDを、車にセットしっぱなしにして、キーを回すと曲が流れだすようにしている。朝、ゴルフ場に向かうとき、その帰り道、彼女の奏でる「ラ・カンパネーラ」やショパンの「ノクターン」を聴きながら運転している。87歳のピアニストの演奏に励まされながら、いつまでもエネルギーを失わずに、彼女の年までに、果たして何回のエイジ・ショットを達成できるかを楽しみにしながら、チャレンジし続けようと思っている。(完)





mshoji について

兵庫県神戸市出身。1960年、県立神戸高校卒業後にブラジルに単身移住。サンパウロ・マッケンジー大学経営学部中退。貿易商社、百貨店でサラリーマンを経験後に独立。保険代理店、旅行社、和食レストランの経営を経て、現在は出版社を経営。ブラジル・サンパウロ州サントス沖グアルジャー島在住。趣味:ゴルフ、乗馬、社交ダンス、カラオケ、読書、料理。twitter:@marcosshoji
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