(97) イトゥー:何かと大袈裟な町

2mもある巨大な公衆電話

巨大な公衆電話

サンパウロ市から州の奥地に向かって北西に伸びる、カステロ・ブランコ街道を経由して、約100キロ走行するとイトゥー市に到着する。3車線の高速道路は、時速120kmで快適に飛ばせるので、約1時間のドライブだ。

イトゥーの特徴は、何といっても物事に大袈裟なことだ。例えば、街のあちこちに巨大な公衆電話や高くそびえ立つ信号機が見られ、食料品店では2メートルもあるチーズが売られている。

このキングサイズが、いつしかイトゥーの代名詞となって全国的に知られるようになり、普通よりサイズが大き目の物を「イトゥーサイズのXX」と称されるようになった。例えば、プロの女性に「あなたのモノは、イトゥー・サイズねっ。」と言われてうれしくない男はいないだろうし、街を歩いている超グラマーな女性を見ると「すげェーな!あのオッパイとヒップ…イトゥー・サイズだぜっ。」と男たちがささやいたりする。

そびえ立つ信号機

そびえ立つ信号機

人口16万人のイトゥーは、過去にはサンパウロ州で最もリッチな町として、栄華を誇った時代があった。海抜600mで、なだらかな起伏を伴ってどこまでも広がる大地と、雨量の少ないトロピカル気候は、大規模な農業に適しており、18世紀にはアフリカから多くの黒人奴隷を導入して、サトウキビと綿花の栽培が大々的に行われて繁栄した。1860年に起きた、世界的な砂糖相場の暴落で、その栄華に影がさした時期があったが、その頃から、砂糖にとって代わって導入されたコーヒー栽培が、イトゥーに新たな繁栄をもたらした。1850年に奴隷の導入が禁止されたため、コーヒ農場の人手を賄うために、ヨーロッパから多くの移民が導入された。最も多かったのはイタリア人で、次いでポルトガル人、ドイツ人らが入植した。現在でも、イトゥーの住民は、その子孫が大半を占めている。

切り売りされる巨大なチーズ

切り売りされる巨大なチーズ

イトゥーに関して特筆すべきことは、ブラジルが、本国ポルトガルから独立する際の舞台裏で、一役買ったことだ。当時、ブラジルに滞在していたポルトガル王室の嫡男、ドン・ペドロ二世は、度々イトゥーを訪れては、当時の権力者だった、大農場主たちと親交を温めていた。そして、度重なる会合から、独立の気運が次第に高まり、1889年、ドン・ペドロをして、本国に対して独立宣言をなさせるに至ったといわれている。市内には、ドン・ペドロ二世が宿泊した邸宅が、記念館として、そのまま保存されている。

1929年に勃発した世界大恐慌のあおりを受けて、コーヒー価格が大暴落したことで、イトゥーの景気は冷え込み、1950年まではゼロ成長の時期が続いた。不景気からの脱却を目指して、イトゥーは工場の勧誘を推進し、タイルや繊維工場が次々と進出してきて、次第に活気を取り戻した。そして、1968年にサンパウロ市と同州の奥地を結ぶ高速道路、カステロ・ブランコ街道が開通したことをきっかけに、その沿線にあって、大都市サンパウロまでわずか100kmと、立地条件に恵まれたイトゥーに、ブラジル内外からさらに多くの工場が進出してきて、現在の経済的安定がもたらされた。

今は無き、往年のコーヒー農場の多くは、土地が小分けになって分譲され、シチオまたはシャーカラと呼ばれる小農園や、高級コンドミニアムに姿を替え、週末になると、大都会の喧騒から逃れて自然を楽しむリッチな人々が訪れる、セカンドハウスや保養地として利用されている。

またヴィラコッポス国際空港まで41kmと、比較的近いことも、イトゥー市民にとっては便利だ。

日本代表が合宿するSPA SPORT RESORT

日本代表が合宿するSPA SPORT RESORT

イトゥーを本拠にする工場の一つに、ブラジル第二のシェアーを持つビール会社、スキンカリオール社があり、2011年に日本のキリン酒造によって買収された。また、自動車部品メーカー、アイシン工業が同市に進出し、2011年から生産を開始して、隣町のインダイアトゥーバ市にあるトヨタ自動車の工場に、部品を供給している。

先週、2014年のサッカーW杯に出場する、日本代表の合宿地にイトゥーが選ばれたことが報道された。予選の組み合わせによると、日本は、レシーフェ、ナタールとクイアバーという、いづれも暑い町で3試合を行うことになったが、イトゥーは前出の3都市と比較しても暑さでは引けをとらないので、無難な選択といえるだろう。合宿に使用されることになったスパ・スポーツ・リゾートは、ブラジルで最も人気のあるサッカー・チーム、コリンチャンスFCが、スランプに陥ったりした際、チーム立て直しのために時折合宿する場所で、イトゥー郊外の閑静な場所にあって、選手が集中するためには好環境にある施設として知られている。ちなみに、このスパ・スポーツは、ブラジル・キリン酒造のビール工場に近い(2km)場所にある。

生ビールが抜群に美味いバール・アレモン

生ビールが抜群に美味いバール・アレモン

イトゥーの街を語るとき、忘れてはならないのはバール・ド・アレモン(ドイツ人のバー)という100年の伝統を誇るドイツ料理の店で、特に生ビールの味は抜群で、下戸でも軽く大ジョッキを干す、といわれる程、喉ごしがいいことで、有名である。料理ではエイスべインという、豚のひざ肉の蒸し物がお勧めだ。

私は年に一度、イトゥー郊外にあるテーハ・デ・サンジョゼー・GCで開催される、シニアゴルフ・オープントーナメントに出場するために同市を訪れる。ゴルフ場は、高級コンドミニアムの中にある、18ホールのチャンピオン・コースで、フェアーウエイに沿って続く高台に、いずれ劣らぬ大邸宅が建ち並び、コースを見下ろしている。

テーハ・デ・サンジョゼーGC

テーハ・デ・サンジョゼーGC

コースはトリッキーで、私にとって相性がイマイチで、まだこのコースでの優勝経験はないが、トーナメントが終わったら必ず訪れる、バール・ド・アレモンの生ビールが、負けた悔しさをいつも癒してくれるので、また翌年、リベンジする気になる。(完)

mshoji について

兵庫県神戸市出身。1960年、県立神戸高校卒業後にブラジルに単身移住。サンパウロ・マッケンジー大学経営学部中退。貿易商社、百貨店でサラリーマンを経験後に独立。保険代理店、旅行社、和食レストランの経営を経て、現在は出版社を経営。ブラジル・サンパウロ州サントス沖グアルジャー島在住。趣味:ゴルフ、乗馬、社交ダンス、カラオケ、読書、料理。twitter:@marcosshoji
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(97) イトゥー:何かと大袈裟な町 への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 日本代表キャンプ地のイトゥは巨大オブジェであふれる街だった! - サッカーニュース速報

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