(87)ブラジルの温泉、熱き河 ”リオ・ケンテ”

見渡す限りの巨大な露天風呂

日本人が、「温泉」という言葉から受けるニュアンスは、都会から離れた場所にある静かで落ち着いた雰囲気のリゾート地にあり、浴場は大きくても小型の室内プール程度で、露天風呂になると、こじんまりとしていて、ひっそりと湯を湛えている、といった感じであろうか。

そんなイメージを持ちながら、友人夫婦に誘われるままに出かけたブラジルの温泉に、私はマジで度肝を抜かれた。

サンパウロ市からバンデイランテス高速道路を北上して450km走ると、牧畜と砂糖キビ栽培で潤っている大都市、サンパウロ州の北端にあるリベイロン・プレート市に到着する。そこからさらにアニャンゲーラ街道を北上すると、お隣のミナス州の一部が三角形に突き出している、通称「三角ミナス」と呼ばれる地域に至る。その辺りまでは農牧畜地帯なので、車窓から望める風景は、延々と続く緑の草原や砂糖キビ畑であるが、さらに200km程走ってミナス州を突っ切るとゴヤス州に突入し、景観は一変して緑の少ない山岳地帯になる。

ブラジル最大の温泉の町、「リオ・ケンテ」は、ゴヤス州内部をさらに150km程北西に進んだ場所にあって、サンパウロ市からだと、3州にまたがる高速道路を、トータルで800kmを走破して到着する。

チェックインを済ませ、早速ひと風呂浴びることにした。

日本の温泉なら、さしずめ素っ裸が当たり前であろうが、こちらは水着の着用が義務付けられている。既に何回も当地を訪れているという友人夫婦に案内され、水着にガウンをはおって、森の中を縫って続く石畳の小道を露天風呂へと向かった。既に夕刻であったが、気温は摂氏20度で、肌に快適だ。

森の中を300m程歩くと突然視界が開け、巨大な露天風呂が目に飛び込んできた。それも1つや2つでなく、6つもの、それぞれ直径30mはあろうかという大きな露天風呂が見渡す限り広がっているではないか。それぞれ水深は人の肩くらいで、水着をつけた男女たちが談笑しながら、あちこちで湯に浸かっている。それは、「温泉」のイメージとは程遠い、正に想像を絶する壮大な景観であった。

早速、湯に入ってみることにした。

恐る恐る足を入れてみると、意外と生ぬるい。水温は摂氏38度とのことである。水底は岩で覆われているので、滑らないように注意しながら、居心地の良さそうな片隅の窪みに身を沈めた。水はきれいに透き通っていて無臭だ。岩の隙間から湯が泡をたてながら湧き出しているのが見える。

ブラジル人たちは湯の中でひたすら談笑にふけり、日本の様にゆっくりと湯に浸かるという雰囲気ではない。日本に比べ、温度がずっと低いので、長時間湯の中で駄弁っていてものぼせないのがいい。

アデマールの穴

大きな露天風呂とは対照的に、直径1,5mほどの穴状の露天風呂が片隅に2つあるのが目にとまった。何でも、その穴は「アデマールの穴」と呼ばれているそうで、1970年代のサンパウロ州知事だった、アデマール・デ・バーロス氏が、週末になると愛人を伴って当地を訪れ、直径1,5m、深さ1,3mのコンパクトな露天風呂に、いつも2人で入って楽しんでいたことから、名付けられたという。そういわれてみると、どことなくセクシーな感じのする「穴」で、二人が残したぬくもりのせいでもないだろうが、ここだけ他の露天風呂より温度が高く、摂氏40度あるという。。

夕暮れ時になると、露天風呂の中央に設えられた円形のバーの周りに、人が集まり始める。カウンターを囲む腰掛けは、湯に覆われていて、座ると腰のあたりまで湯に浸かる。外から身体を温めながら、中から冷たいビールで冷やす、いう寸法だ。竜田揚げもどきの、川魚のフライをつまみながら、湯の中でかたむけるジョッキの味は格別で、至福ものだ。

熱き河「リオ・ケンテ」は1722年に、ポルトガルから派遣された探索隊(バンデイランテス)の一員、バルトロメウ・ブエノによって発見されたといわれている。歴史の供述によると、森に迷い込んだ彼の愛犬が、森の奥で急にキャンキャンと鳴きだした。駆けつけた探検家は、落ちた犬を助けようと流れる川に足を踏み入れたところ、熱湯であることを発見したのがきっかけだという。それから噂が広まり、国内外から観光客が当地を訪れるようになったという。

源泉から河に放出される湯の量は、一時間に623万リットルで、24時間の排出量は1,5億リットルに達するというから驚くべき水量である。水温は、源泉では摂氏42度であるが、一連の露天風呂に流れ込む頃には、少し下がって38度になるという。

2時間近くお湯に浸かり、ビールでほろ酔い気分になったところで夕食となる。食事は、バイキング形式で、豊富な野菜と果物に、牛、豚、鶏、川魚を素材にした田舎風の料理がテーブルに盛りだくさんに並んでいて、食べ放題だ。

ブラジルのほぼ中央に位置するゴヤス州は、1年の内、乾季と雨季がはっきりしており、4月から9月はほとんど雨が降らず、雨季となる10月から3月には、夕方になると決まってスコールが降り注ぐというパターンの気候である。一年を通じて晴れの日が多く、年間平均気温は摂氏23度で、リゾート地としては最高に恵まれているといえる。

波が押し寄せる人口の浜辺

翌日も快晴で、朝から敷地内にある「HOT PARK」と名付けられた、広大な娯楽施設を訪れた。こちらの露天風呂は、風呂というよりむしろ露天プールという表現が当っている位、さらに規模が大きく、直径100mくらいは優にある自然プールがあちこちに設けられている。圧巻は、「セラード・海岸」と呼ばれる人口の浜辺で、幅200mはあろうかという砂浜に、6基の航空機のジェットタービンを作動させて起こした波が打ち寄せるというもので、正に海辺そのものだ。これが全て水ではなく、38度の「お湯」なのには、恐れいる。

その他、ホット・パークには、様々な子供用の娯楽・遊戯設備があって、子供連れの家族を飽きさせない。

露天風呂(というかプール)には、どれも湯の中にバーがあって、朝から生ビールのジョッキをかたむけている人たちが群がっていて、小原庄助さんよろしく、朝湯・朝酒を楽しんでいる。私も10時頃から飲み始め、数杯目のジョッキで尿意を覚え、トイレを探して駆け込んだが、あれだけ多くの人たちが大量にビールを胃に流し込んでいるにもかかわらず、意外にもトイレがガランとしていることが、とても不思議に思えた。もしかして、そのままプールに....??

高さ3mの穴から落ちる湯は、全身マッサージに最適

ちなみに、午前1時になると全露天風呂の水門が解放され、湯が一気に放出されて、新たな湯に入れ替えられるそうである。それを聞いてからは、朝6時に起きて、一番湯に入ることにした。特に、早朝に3mの落差のある穴から落ちる湯の滝に打たれると、下手なマッサージ師にかかるより、肩コリに効果的で、スッキリして一日に臨める。

温泉の効果については、特に記述がないが、4泊5日の間、気のせいか、いつもより身体に精気がみなぎってくるような気がして、心ゆくまでパートナーと夜を楽しんだ。 ひんぱんに訪れていたという、アデマール前州知事も、そんな効用を知っていたのかも知れない。  (完)

mshoji について

兵庫県神戸市出身。1960年、県立神戸高校卒業後にブラジルに単身移住。サンパウロ・マッケンジー大学経営学部中退。貿易商社、百貨店でサラリーマンを経験後に独立。保険代理店、旅行社、和食レストランの経営を経て、現在は出版社を経営。ブラジル・サンパウロ州サントス沖グアルジャー島在住。趣味:ゴルフ、乗馬、社交ダンス、カラオケ、読書、料理。twitter:@marcosshoji
カテゴリー: (き)気候が快適 パーマリンク

(87)ブラジルの温泉、熱き河 ”リオ・ケンテ” への1件のフィードバック

  1. 三田 より:

    お世話になっております。
    日本テレビ「世界番付」の番組を担当しております三田と申します。

    この度、番組内世界の温泉のネタを予定しており、
    その際にこちらのブログ内の画像を使用したいと考えておりご連絡差し上げました。

    画像の方が使用可能でございましたら、下記のメールの方までご連絡頂きたく思っています。

    お忙しい中、大変恐縮ではございますが1週間以内までにはご連絡頂きたい思います。

    すみませんが、ご確認の程宜しくお願い申し上げます。

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