(74)フランス・パンが大好きなブラジル人

ブラジル人の食生活にパンは欠かせない

ブラジル人の食生活にはパンは欠かせない。 ブラジルの街の区画は大体100メートル四方になっているが、日本のコンビニのように、3~4区画毎に一つは必ずパダリアと呼ばれるパン屋さんがある。

 ブラジル人たちが最も好むパンは、ポン・フランセース(フランス・パン)という種類のコッペパン大のパンで、表面がコンガリ焼けていて皮が堅く、中味は白くてフカフカしている。味は軽めの塩味である。

ブラジル人が最も好むポン・フランセース(フランス・パン)

19世紀頃までブラジルで主に食されていたパンは、表面も中味も黒みがかったものだったが、20世紀になって第一次世界大戦の勃発により、ヨーロッパに滞在していた知識階級のブラジル人たちが大挙して帰国した際に、当時フランスを中心に最もポピュラーなパンであった、表面がコンガリ焼けた中味の白いパンのレシピを持ち帰り、見よう見まねでそれぞれの家庭で造り始めたのがブラジルにおけるフランス・パン普及のキッカケになったという。

 その後、大量に導入されたイタリア移民の中からパン屋を生業にする人たちが多く現れ、ブラジル全土で一気にポピュラー化したといわれているが、その過程でフランス・パンと呼ばれながらも、本場フランスのものとはかなり異なった、ブラジル独特のパンになっていったようだ。

そんな歴史があるにも関わらず、ブラジルにあるパン屋さんの経営者は何故かポルトガル系の人が多い。その理由は定かではないが、聞くところによると、パン屋の仕事は過酷で、早朝にはパンを求めてお客が押し寄せるので、明け方の未だ暗いうちから仕事を始めなければならない。生地をこねては焼き、焼いてはこねるという単純作業を365日明け方から夕刻まで繰り返す重労働に耐えられたのはむしろポルトガル系の人たちで、いつの間にか、イタリア系に取って代わったということのようだ。

ベンガーラ(杖)と呼ばれる細長いパン

その昔、ブラジルに到着した私は、サンパウロのダウンタウンにある下宿屋に落ち着いたが、翌日の朝食に出されたパンの美味しかったことが、今でも強く印象に残っている。竹籠に入れられて食卓に上がったパンは、ベンガーラ(杖の意)と呼ばれる、50センチは優にあろうかという細長いパンで、直径10センチ位のものを、ナイフで3センチ幅にズバズバとブツ切りにしたものにバターを塗って食した。

 下宿に寝泊まりしていた娘たちが、パンのことを「ポン」と発音していたのが、何かの擬音のようで面白かったことが、その美味しさと共に印象に残った。

ベンガーラと同じ味のパンが、昨今ではポンジーニョと呼ばれる1個か2個で朝食に適量なコッペパン仕様のものに取って代わられている。

早朝になるとどこのパン屋さんも、亭主や女中さんたちで長蛇の列ができる。列に主婦の姿が少ないのはブラジルの夫婦間の力関係を表していて面白い。

 ちなみにパンは一個単位ではなく、目方で売られており1キロ当たり5レアール(250円)で、20個程買える。

 サンドイッチに使われるのも圧倒的にポンジーニョが多く、二つに切ったパンに焼き肉を挟んだシュラスコ・サンドや、ハムとチーズを挟んだミックス・サンドなどを、ブラジル人たちは好んで口にする。

日本に比べるとブラジルの食パンはイマイチだ

近年になって、いわゆる食パンといわれる種類のパンの消費も増えているが、フランス・パンに比べると微々たるものだ。 サンドイッチを注文すると、「パンはフランス・パンか食パンか?」と必ず聞かれる。私は、硬い皮をバリッと噛みながら味わうフランス・パンのサンドイッチが断然好きだ。

食パンといえば、私は1992年から12年間日本に滞在したが、日本の食パンのクオリティーは、恐らく世界一ではなかろうかと思うくらい美味なのには驚かされた。滞在中はもっぱら美味しい食パンのお世話になったが、それでも、ブラジルのフランス・パンの味が恋しかったものだ。表面がカリカリで歯ごたえがあり、中味がシットリしていて微妙な塩味がするポンジーニョは、正にブラジル文化の一つといえるだろう。ちなみに、在日ブラジル人たちも同じ思いのようで、愛知、静岡、群馬県などにあるブラジル人コミュニティーでは、フランス・パンを製造販売しているブラジル人がいて同胞たちの郷愁を慰めている。

ブラジルに戻ってから、ポン・デ・フォルマと呼ばれる食パンの味がイマイチであることに気付いたが、それ以後も特に改良の兆しが見られない。ブラジルで、日本のノウハウによる食パンを造れば売れるかも知れない、と思ったりする。

パン屋はもはや零細企業ではない

パダリアもしくは、パニフィカドーラと呼ばれるパン屋さんは、昔は零細企業の最たるもので、トーチャンがパンを造ってカーチャンが店頭で売るスタイルが多かったが、昨今は企業化が進み、テーブルでコーヒーを飲んだり、軽食をするスペースが用意されるようになり、朝食を毎日パン屋さんで摂るサラリーマンも多い。さらに昼食時になると、日替わり定食のサービスをする店もあり、パン屋さんは、お揃いのユニフォームを纏って立ち働く従業員を数名雇って朝から夜まで休むことなく営業する、立派な企業になっている。

 店頭で売られる商品も、パンだけに留まらず多種多様なケーキ類、お菓子、スナック類や、ハム、チーズ類も扱われ、飲み物はジュース、清涼飲料、ビールを始め、各種の酒やたばこまで売られるのが普通になっている。 パン屋を訪れると、先ず入り口でプラスティックの番号札を手渡される。店内で消費した金額は、その都度端末機にインプットされ、出口で清算するシステムが取られている。

パン屋のサービスは、どこもおおむね迅速で、昨今ではビジネスマンたちが、商談に、時間のかかるレストランよりパン屋を使うケースも増えており、その利用法はどんどん多様化している。 このように地域社会に密着した存在のパン屋さんを、住民たちは一日に一回、家族の誰かが、何かを買いに訪れることになるので、車社会のブラジルでは、大型店になると駐車スペースは不可欠で、短時間に出入りをする車は引きも切らない。(完)

mshoji について

兵庫県神戸市出身。1960年、県立神戸高校卒業後にブラジルに単身移住。サンパウロ・マッケンジー大学経営学部中退。貿易商社、百貨店でサラリーマンを経験後に独立。保険代理店、旅行社、和食レストランの経営を経て、現在は出版社を経営。ブラジル・サンパウロ州サントス沖グアルジャー島在住。趣味:ゴルフ、乗馬、社交ダンス、カラオケ、読書、料理。twitter:@marcosshoji
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(74)フランス・パンが大好きなブラジル人 への6件のフィードバック

  1. shoji6 より:

    日本の食パンは美味しい、これはおっしゃる通り万人の実感でしょう、ただメーカによって、また同じメーカーでも質の優劣品があり、買う時の注意が必要だ。独占企業的なY社のソフト食パンは美味しさで群を抜いていて我が家での常食ではあるが、一方ブラジルのポンジーニョの美味しさも忘れ難い。貴兄宅にお世話になった期間中、毎朝食の焼き立てポンジーニョ、ハム、チーズ、バター、多種類の新鮮フルーツに牛乳、そして入れたてのブラジルコーヒーは、帰国後も毎朝思い出しては生唾を飲んでいる。ブラジルでのご飯も日本と遜色なく美味しいと感じたし、多種民族の特色を生かしたブラジル食文化の多様性も含め、旅の楽しさの一つのグルメに関してはブラジル(特にサンパウロ)は五つ星だ。

  2. shoji6 より:

    朝食のメニューのなかに、絞りたて”フレッシュオレンジジュース”が抜けていました。

  3. P.Marquis より:

    神戸は昔から外国人が居住し洋食(イタリア、スペイン、フランス、など)も昔からありパンもケーキも他の都市より旨かったと思いますが、この数年東京もフランスのパン屋の出店や外国で修業してきた若い人のパン屋がいっぱいできてます、パン好きのわたくしはいろいろなパンを楽しんでます、わたくしも最初に20代でパリに行った時の朝飯の焼き立てのフランスパン、カフェオレはものすごくおいしく感じました、又イギリスでは料理は美味しくありませんが朝飯だけはうまく、特にカリカリのトーストは大好きです、日本でもトースト用はイギリスパンを食べてます、イタリアはパンはあまり美味しくありません、デイニッシュ系(菓子パン)は旨くそれとカプチーノでバールで朝飯をよくたべます、所で日本にパンを入れたのはポルトガル人だと聞いてますがポルトガル独特のパンは?ブラジルで食べたチーズパン、揚げパンなどはそうですか?

    • mshoji より:

      ポルトガルのパンについては、知識がありませんが、少なくともブラジルに持ちこまれたパンは、極めて素朴な黒い色をしたパン、いわゆる玄麦パンだったのではなかろうかと思います。ブログに記したようにブラジルにあるパンは、ブラジル人自身がヨーロッパからおいしいパンのレシピを持ち帰ったもので、ポルトガル人が持ち込んだものではないようです。チーズパンは、料理の本場、ミナス州で考えられたパンで、ブラジル生まれです。揚げパンって、こちらで食べましたっけ?

      • P.Marquis より:

        ゴルフ場でスナックとして卵入り、チキン入りをたべましたが?揚げパンじゃなかったな?

  4. Hi, I read your new stuff regularly. Your humoristic style is awesome, keep it up!
    Ray Ban Wayfarer http://www.homesnetwork.com/

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