(49)大河ドラマも顔負け・ブラジルのテレビドラマ

スラム街を警察がガサ入れするシーン


ブラジルのテレビ番組で、高視聴率を獲得するのは、何といってもテレビ・ドラマである。
番組は、地上波チャンネル(無料)で、夕方6時からロマンスがテーマの青少年向けドラマが始まり、7時台の家族向けコメディーと続き、8時からのニュース番組を挟んで、9時台にメインの成人向けドラマが放送される。

特筆すべきは、最も視聴率の高い9時台のドラマは、日曜日を除く毎日、一回あたり55分の番組が、約8カ月に亘って、延々と200回以上放送されることである。
日本で最も長編とされるNHKの大河ドラマでも、週1回45分の放送で、1年間続けたとしても、39時間で完結するが、ブラジルのドラマは、完結までにその5倍に当たる時間を費やすることになる。この長時間を、ハラハラ、ドキドキさせながら、視聴者たちをテレビに釘付けにする筋書きを考える、クリエイチブなブラジルのドラマ作家の才能と忍耐力には、いたく感心させられる。

登場人物も多様性に富んでいる

特にグローボ局の9時台ドラマは、永年に亘って視聴率60%台をキープしていたが、衛星・ケーブルテレビとインターネットの台頭で、視聴率はやや下降気味であるとはいうものの、それでも40%台という、驚異的な数字を保っている。
ドラマの人気は、国内だけにとどまらず、ポルトガル、チリー、スペイン、ロシア、メキシコなどに輸出され、いずれの国でも大好評を博している。

テーマは、ブラジルの過去と現在の、庶民の生活(主に中産階級)に密接したものが多く、舞台は大都会、田舎町、アマゾンやパンタナルなどの大自然など多彩に亘り、時には移民の故郷であるポルトガル、イタリアや中近東に移ることもある。出演者の数も膨大で、主な登場人物だけでも30~60人にも昇る。
ドラマの筋書きは、極めて明快で、少数の中心人物たちが主体になって繰り広げられるが、登場する人物像は、大体において青年男女、下町の人々、泥棒(悪人)、娘、息子、夫婦、年寄りなどで、交互に出入りしながらストーリーに絡む。演ずる俳優たちは、ブラジルらしく多様性に富んでおり、白人、黒人、インジオ、東洋人(日系人も多い)などが入り乱れて登場する。
ドラマは、恋愛、夫婦愛、不倫、友情、憎悪、裏切り、善意と悪意、犯罪、権力、富裕と貧困など、世相を反映した出来事が、目まぐるしく次々と交差して展開され、視聴者を飽きさせない。

9時台のドラマでは、濃厚なラブシーンなど当たり前

9時以降ということで、時間的には一応子供は就寝していることを想定しているので、かなり生々しいラブシーンや、暴力シーンなどが出てくるが、実際には9時に寝ているのは幼児くらいで、未成年者たちも大っぴらに視聴している。ブラジルの子供たちが早熟になる原因の一つであろう。

私は、テレビ・ドラマから多くのことを学んだ。ドラマそのものが好きで、ストーリーを追いかけていた訳ではないが、日常生活における様々な会話、男女の会話で使われる言葉(特に女性を口説く言葉)、敬語の無いポルトガル語で目上の人に対する話し方など、ブラジル人たちのコミュニケーション手段の実態が、ドラマでは明確に表現されていて、大いに参考になった。

街娼と交渉するシーン


口論になった場合、女性が怒ったときや、自分を主張するときに口にする言葉、落胆している人を慰め、励ます言葉などを、ドラマから覚えた。

日本でいわれる、「沈黙は金なり」とか「以心伝心」、「目は口ほどにものを言う」などは、ブラジル社会では通用せず、「言葉に強弱をつけて、はっきり口に出す」ことが、異文化の人たちからなる、この国におけるコミュニケーションの主流であることを、テレビ・ドラマを通じて、私は理解していった。
言葉にするだけでなく、伝えたいことの重要性に応じて、手振りや身振りを加えると、よりインパクトのあるコミュニケーションが可能になることも覚えた。

ラテン民族全般の特徴であると思われるが、ブラジル人は口が減らないというか、口が達者で如才がなく、口論になると、(私のように)中途半端なポルトガル語では、先ず勝ち目がないことや、男性と同じレベルで主張する、女性の意見を尊重することの大切さなどを、ドラマで学ぶと同時に、実地に試してみて、納得するようになった。
また、ドラマのお陰で、数多くのブラジルの文化や習慣を知ることが出来、それらは人生の折々で、大いに役立った。                    (完)              

mshoji について

兵庫県神戸市出身。1960年、県立神戸高校卒業後にブラジルに単身移住。サンパウロ・マッケンジー大学経営学部中退。貿易商社、百貨店でサラリーマンを経験後に独立。保険代理店、旅行社、和食レストランの経営を経て、現在は出版社を経営。ブラジル・サンパウロ州サントス沖グアルジャー島在住。趣味:ゴルフ、乗馬、社交ダンス、カラオケ、読書、料理。twitter:@marcosshoji
カテゴリー: (す)スケールが大きい, (ジ)人種差別がない, (ル)ルーツの多様性 パーマリンク

(49)大河ドラマも顔負け・ブラジルのテレビドラマ への2件のフィードバック

  1. マキムラ より:

    外国語を早く馴れる早道は、ガールフレンドを作る、興味深い映画、テレビ、本(色っぽいものが良い)を見る、出来るだけ外の出て憶えた言葉をしゃべる、等私も初めて外国生活の際に実行しましたが、私の場合アメリカでしたのである程度の文化の違いは理解してるつもりでしたが、人種差別、人種ごとでの文化の違いなぞビックリする事がいっぱいでしたが最初は仕事でなく学生でしたのでそれほど困る事はありませんでしたが、学校を卒業後の就職先では結構苦労しましたが、貴兄の苦労に比べたらたいした事無いでしょう、日本の現在の社会でも、自分の主義、主張をしっかりする様になりましたが、日本の相手を思いやる優しい文化は伝承していって欲しいと思います。

    • mshoji より:

      貴方はアメリカ社会は、思いやりのない社会だと感じましたか?ブラジルは結構思いやりのある社会だと思います。元々は移民たちの国で、どん底からスタートした人たちが多いからかな..日本の社会については、実感はあまりないけど、きっと思いやりのある社会なのでしょうね..

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