(43)南国ブラジルのクリスマス

冬物衣装のサンタクロースは汗だくで大奮闘

ブラジルのクリスマスは真夏だ。カトリックの国なので、クリスマスは一年を通じて皆が最も待ち望んでいる祭日である。
移民の国、ブラジルに住んでいる人たちが、最も大切にするのは、家族の絆である。というのは、他国から移住してきた人たちが、当初頼れるのは家族だけであったことと、単身移住者たちも、結婚して家族ができることによって、ブラジルに落ち着き、本当の意味での人生が始まるからだ。
クリスマスは、そんな家族たちが一年に一回、それぞれが万難を排して、一堂に会する、かけがえのない日なのである。
12月に入ると、街はクリスマス・ツリーや点滅する豆電灯などによる飾りつけが行われる。家庭では、クリスマス・ツリーが居間に飾られ、マンションや家屋の扉という扉には、ギルランダという丸い飾りつけがぶら下げられる。商店街や、ショッピング・センターなどでは、サンタクロースが子供たちに愛嬌を振りまく。北国が発祥地の伝統的なサンタの衣装は冬物であるが、南国ブラジルでもそのまま使用されるので、余程エアコンでも効いていない限り、中味のサンタおじさんは、蒸し風呂に入っているようなもので、汗だくの重労働になる。

ギルランダと呼ばれる扉につけるクリスマスの飾り

祭日そのものは、12月25日であるが、24日もいわば休日のようなもので、勤め人たちは朝からロクに仕事をせず、12時になるとサッサと居なくなる。家族から離れている人たちは、里帰りをあらかじめ伝えておくと、この日だけは欠勤にならない。
ブラジルの労働法では、一年に一ヶ月の有給休暇を取ることが義務付けられており、休暇を取らずに働いて給料を受け取ることは禁止されている。したがって、例えば12人の人手が必要な零細企業などでは、常に誰かが休暇を取っていることになるので、実働しているのは11人ということになり、一人足りないため13人雇用しておく必要がある。1000人規模の大会社の場合だと、100人余分に雇用していることになる。
ところが実は、12人でやれる方法がある。それは、社員全員に一斉休暇を取らせるのだ。勿論その間、会社は閉鎖することになる。時期的には、年末年始にかけてとか、カーニバル前後とか、祭日が多くて、社員たちがお祭り気分で、飛び石出勤をさせても能率があがらない時期に、実施されることが多い。特に従業員の多い大手メーカーなどは、機械を止めたり動かしたりするより、一斉に休んで一度止めるだけにする方が、かえって効率が良いという。
我社、JBC出版社も、今年は18日で仕事収めになった。このような一斉休暇は、近年では、銀行や小売業など、一部の職種を除いて、実施する会社が一般的になっている。クリスマスに次いで、ブラジル人が大切にする祭日は大晦日で、その間の一週間は、大概の人たちは休暇をとっているか、もし出勤していたとしても、ほとんど仕事はしていない。
そんな訳で、クリスマスから年末にかけての日々は、ブラジル人たちが、仕事のことは一切忘れ、一年中で最もリラックスしている時期である。

ブラジル・バージョンのサンタの衣装。註:あくまでも商業用で街中では見られない

さて、クリスマスに家族全員が集まる訳だが、嫁に行った娘はどうなるかというと、ブラジル式と日本式では、そのコンセプトに差がある。まず、ブラジルでは嫁に行くというよりも、婿が来るという考え方が一般的だ。クリスマスに限らず、何かの機会に家族が集まるときは、娘が里帰りし、婿が一緒についてくる。ところが、日系人の家庭では、日本的考え方が優先されており、婿が里帰りし、嫁がついていく。我が家の場合は、長女はアメリカ人、三女は非日系ブラジル人と結婚したので、クリスマス・イブには婿たちがウチに来る。ところが、日系人と結婚した次女は、旦那の家族とイブを過ごすことになる。
さて、クリスマス・イブの日は、女性たちは午後から料理の準備に、おおわらわになる。料理の定番は、子豚の丸焼き、七面鳥(最近ではチェスターという、鶏と七面鳥のアイノコのような鳥が主流になっている。肉は七面鳥のようにパサパサ感がない)パネトーネ、栗、くるみに、様々な果物などである。夜の10時ごろになると、シャンパンやワインを開け、皆で料理を囲む。

クルスマスには欠かせないパネトーネ

中でもパネトーネはクリスマスには欠かせない食べ物だ。そもそもパネトーネは、イタリアのミラノが発祥地の甘口のパンで、ダマスコ、ミカン、レモン、乾しぶどう、いちじく、リンゴなどを細切れにしたものが入っている。一説によると、17世紀にイタリアのロンバルジア地方で、TONIというパン屋の若者がある娘に恋をし、彼女の母親の機嫌をとるために特別のパンを考案して、クリスマス・プレゼントにしたのが、始まりで「PAO DI TONI(トニーのパン)」から、PANITONEという名が生まれたそうである。ブラジルでは、毎年クリスマスの前に、従業員たちにパネトーネをプレゼントとして手渡すことを、恒例にしている会社が多い。ちなみにブラジルには、日本のようにクリスマス・ケーキと称されるタイプのケーキを食べる習慣はない。
さて、クリスマス・イブはシャンパンとご馳走で盛り上がり、いよいよメインエベントである、プレゼントの交換が始まる。
ブラジル人たちは、プレゼントをあげたり、貰ったりするのが大好きな国民で、それぞれが身分相応の予算で、相手にお似合いのプレゼントを思案して選び、喜々として、それを手渡す。貰う方は、すぐさま包装紙をはぎとり、中味を確認した上で、嬌声をあげ、キッスしたり、抱きついたりして、思いっきり大げさに喜びの表現をするのが、こちら流のエチケットだ。
その時間になると、道路を走る車はほとんどなく、街路から一切の人影が消える。この日ばかりは、年中無休のナイトクラブも、閑古鳥が鳴く。1億9千万人が、それぞれの家庭で、久しぶりの家族の団欒を、目一杯楽しんでいるのだ。
家長を始め、年長者たちは、孫たちの顔を見ながら、ブラジルにおける自らの歴史に、思いを馳せたりする。そうして、南国のクリスマス・イブの夜は静かに更けてゆく。(完)

mshoji について

兵庫県神戸市出身。1960年、県立神戸高校卒業後にブラジルに単身移住。サンパウロ・マッケンジー大学経営学部中退。貿易商社、百貨店でサラリーマンを経験後に独立。保険代理店、旅行社、和食レストランの経営を経て、現在は出版社を経営。ブラジル・サンパウロ州サントス沖グアルジャー島在住。趣味:ゴルフ、乗馬、社交ダンス、カラオケ、読書、料理。twitter:@marcosshoji
カテゴリー: その他、色々, (ラ)ラテン気質は陽気 パーマリンク

(43)南国ブラジルのクリスマス への3件のフィードバック

  1. shoji6 より:

    Feliz Natal! e prosoero Ano Novo 2011.

  2. shoji6 より:

    Feliz Natal e prospero Ano Novo 2011!
    Merry Chistmas and Happy New Year 2011!
    ¡Feliz Navidad y prospero Año Nuevo 2011!
    クリスマスおめでとう、2011がいいお年でありますように!

  3. mshoji より:

    ブログをご愛読の皆様、どうか良いお年をお迎えください。来年も、同様にアクセスいただきますよう、よろしくお願いいたします。

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