(35)ブラジルにある「雪の降る町」

サン・ジョアキン市の雪景色

ブラジルにも雪が降る。

日本の人たちには信じられないかも知れないが、紛れもない事実だ。サンパウロ以南にある3州の真ん中に位置するサンタ・カタリーナ州の山岳地帯では、冬になると雪が降る。特に、州の最南で、標高1,353mのサン・ジョアキン市周辺は降雪量が多く、最低気温が-10°Cになる。過去には-17,8°Cを記録した年もある。ちなみに年間平均気温は13°Cである。毎年、冬になると雪を一目見ようと、ブラジル全土から多くの観光客が訪れる。

サンタ・カタリーナにはヨーロッパ風の家屋が多い

19世紀後半にサンタ・カタリーナ州に導入された移民は、主にドイツ、ポーランドとイタリアからであった。山岳地帯なので、地形的に多大な労働力を必要とするコーヒーや砂糖キビなどの栽培に適さなかったことと、気候的に寒いせいもあって、アフリカ系の奴隷は導入されなかったため、現在でも人口に占める黒人の割合は皆無に近い。そのため、ブラジル北部の町々と比較すると、同じ国の町とは思えないほどエキゾチックで、家屋は屋根の傾斜が急な北欧風のものが多く、どの街もヨーロッパと見まごう雰囲気を漂わせている。

リンゴのキャンペーンガール

またこの地帯は、ブラジル最大のリンゴ産地として有名で、私は、そんな町の一つであるフライブルゴ市を数年前に訪れる機会があった。そこは、山岳地帯の中ほどにある人口3万5千人の町で、1919年に、フライ氏というドイツ移民によって造られた町(市制は1961年)であるが、その子孫で、二代目のウイリー・フライ氏の招待による訪問であった。

サンパウロから約一時間でジョインヴィレ空港に着く。そこから6人乗りの小型機に乗継ぎ、30分程のフライトで、ヴィデイラという小さな空港に降立った。それから車で、いかにも山間地帯といった雰囲気の、松や杉の林を縫って続く山道を、20キロ程走るとフライブルゴ市に到着する。時期的には、初夏だったので、山々は深い緑に覆われていたが、運転手によると、冬は雪が積もるとのことだった。

街が一望のもとに見下ろせる高台に建てられたレンネル・ホテルは、まるでスイスの山間ホテルのようなシャレた建物だ。同市に着いて最初に気付いたことは、街を歩いている男女の大部分が金髪であることで、ウィリー氏によると、今でもドイツ系の住民が圧倒的に多いとのことであった。商店街の看板は、屋号がドイツ語のものがほとんどで、サンパウロの東洋街で軒並みに並んでいる日本語看板のドイツ版といった感じだ。

ウィリー氏は、50才代の、実直そうで、いかにもドイツ人といった雰囲気をもった企業家で、リンゴ農園と、松の木の植林地を保有し、家具の工場を経営している、市の名士である。郊外の静かな山間に建てられた北欧風の自宅の庭には、滝までしつらえた立派な日本庭園があり、自家用車は日本製のスバルという徹底した親日家で、私と、同行した娘を大歓迎してくれた。

氏の案内で訪れたリンゴ農園は、そのスケールの大きさに目を瞠った。三つの山々にまたがって、見渡す限り延々と続くリンゴ畑は、サンパウロ州に見られるミカン農場や、コーヒー農場に匹敵するほどの壮大な景観を呈していた。私は、日本最大のリンゴ産地である青森のリンゴ園を訪れたことはないが、小さな農園がたくさん集まっているようなイメージで、いくらなんでも一山すべてが一農家のリンゴ畑ということはないだろうと思う。
種類は日本が原産の「フジ」であるが、日本のものより小型である。日本のスーパーなどで売られているフジは大きく、形が揃っていて、いかにも手塩にかけて育てた、という感じがするが、フライ農場で収穫されたリンゴはやや小さく、形も不揃いで、質より量が優先されているような印象を受けた。しかし、食べてみると原種と変わらないくらい甘く、美味しかったことは少々驚きであった。ウィリー氏によると、国内販売が60%で、あとはヨーロッパに輸出しているとのことであった。ブラジルはヨーロッパと季節が反対なので、向こうのリンゴが時期はずれになった頃、ブラジルのリンゴが最盛期を迎えるため、需要は極めて大きいという。
ちなみに、ブラジルにおけるリンゴの植え付け総面積は3万ヘクタールで、年間90万トン(日本は84万トン)のリンゴを生産する。輸出に当てられるのは全体の20%である。

自宅で、自家製の太めのソーセージをつまみに、泡のきめが細かいドイツ風ビールでジョッキを傾けながら、ウィリー氏はドイツ文化と日本文化の類似点についてのうんちくを語り、その内スライドして第二次世界大戦の、イタリアを含めた3国同盟のことにまで話が及んだ。久しぶりに話のわかる(?)日本人との歓談だったせいか、はたまたビールのせいか、ウィリー氏はことのほか上機嫌で、「前回の大戦で、先ず白旗を上げたのはイタリアだ。もし次の大戦があれば、今度は彼らを除いて、ドイツと日本だけで同盟を結ぼう」と、気炎をあげていた。  

サンタカtリーナ州には金髪美人が多い

フライブルゴ、サンジョアキン市などがあるサンタカタリーナ州の山岳地帯には、主にドイツとポーランド移民が入植したが、東部の海岸地帯は、ポルトガル移民、南部はイタリア移民、さらに西部にはイタリアとドイツ移民が入植した。州全体がヨーロッパ系移民で占められている、ブラジル有数の白人地帯で、目も覚めるような金髪美人が街を歩いている。彼女たちの中には、その美貌を最大限に生かし、女優、トップモデル、テレビ・キャスターなどの職業についている人たちが多い。
また、そのビジュアルを裏稼業に生かしている女性も多い。サンパウロ以北の都会で、「その道」のいわゆるプロフェッショナルとされる金髪美人がいれば、かなり高い確率で、サンタカタリーナ州の出身だ。彼女たちは、故郷から遠い土地に、出稼ぎに出かける。数ヵ月後、何食わぬ顔で地元に戻り、稼いだ資金を、学資にしたり、マイホーム購入に当てたりする。   (完)

mshoji について

兵庫県神戸市出身。1960年、県立神戸高校卒業後にブラジルに単身移住。サンパウロ・マッケンジー大学経営学部中退。貿易商社、百貨店でサラリーマンを経験後に独立。保険代理店、旅行社、和食レストランの経営を経て、現在は出版社を経営。ブラジル・サンパウロ州サントス沖グアルジャー島在住。趣味:ゴルフ、乗馬、社交ダンス、カラオケ、読書、料理。twitter:@marcosshoji
カテゴリー: (き)気候が快適, (す)スケールが大きい パーマリンク

(35)ブラジルにある「雪の降る町」 への1件のフィードバック

  1. virtual trip より:

    おはようございます!最近ブラジルにはまっています。

    とにかく大地がとてつもなく広大です!!!

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中