(22)未来都市・首都ブラジリア

上院・下院、二つの皿を並べた国会議事堂

ブラジリア中央寺院

サンパウロを飛び立ち、快晴の空を北西に進路をとったボーイング737は、眼下に広大なブラジル高地を見下ろしながら、一万メートルの上空を飛行していった。既に一時間以上、まるで飛行機が空中で止っているかのように、同じ風景が延々と続いている。出発から2時間、高度が下がりはじめた。この辺りは、ブラジル有数の大農場地帯だ。緑の大地に農場の境界線らしき筋が見え始める。飛行機が着陸態勢に入った。前方に鉤形の巨大な湖が現れ、それに挟まれるように大きな飛行機の形をした町が見える。首都ブラジリアだ。

私は、シニア・ゴルフトーナメントのブラジリア・オープンに参加するため、毎年ブラジリアを訪れるが、今年も乾季で快晴の日が続く、5月に首都に降立った。

膨大な国土を有するブラジルを、隈なく発展させることを目的に、丁度国の中央部にあたるゴヤス州に、首都を移転させるプロジェクトは、1922年に時の大統領、エスタシオ・ペッソーアによって企画され、既に礎石がなされていたが、建設に着手するまでには至らなかった。1955年、次期大統領選挙に立候補していたジュセリーノ・クビシェック氏が、選挙運動のために同地を訪れた際に、住民から首都建設の是非を問われ、その場で実行を決断し、公約したといわれている。

大統領に当選したクビチェック氏は、公約を果たし、わずか3年7カ月の突貫工事で、任期中にブラジリアを完成させた。こうしてブラジルの首都は、奇しくも私がブラジルに到着した1960年の4月に、リオ・デ・ジャネイロから、ブラジリアに遷都された。

ボーイング737は、静かに滑走路をすべり、ゲートに横付けされた。出口に向かう廊下には大きな丸窓が並んでいて、飛行場の全景が見渡せる。そこには、無数の小型機がずらりと並んで翼を休ませている。農場主たちが所有する自家用機だ。この辺りの農場は、ほとんどが敷地内に自前の滑走路を持っているのだ。

ホールに出ると、普通のタクシーのドライバーと、小型飛行機のタクシーのパイロットが、客引きのために近づいてくる。この空港に降立つ乗客の中には、さらに小型飛行機に乗り継いで、目的地に飛ぶ人たちがたくさんいるのだ。私は、普通のタクシーを拾ってダウンタウンに向かった。

飛行場から出た途端に、4車線の高速道路に乗った。信号を一つも通過することなく、ものの20分でダウンタウンの入り口に到着した。

街の真ん中を貫いて走る「巨大軸」モヌメント大通り


飛行機の胴体に当たる部分が、「巨大軸」と名付けられたブラジリアのメイン・アヴェニューだ。幅が優に100メートルはある緑の中央分離帯を挟んで、一方向6車線の道路が、16kmにわたって、街を二分して真直ぐ東西に走っている。その突き当り、操縦席にあたる部分が国会議事堂だ。そして飛行機の両翼に当たる部分に、南北対称に街が形成されている。私の目指すナショナル・ホテルは南ウイングのホテル専用ブロックにあるが、同じようなホテルブロックが、メイン・アヴェニューを隔てた、北ウイングにもある。このように、ホテル、レストラン、銀行、アパレルストアー、スーパーマーケット、本屋など、業種によって区分されたブロックが、南北対称に設けられているのが、ブラジリアの街造りの特徴だ。

高台にあるメイン・アヴェニューの入り口から、街の様相が一望できる。その整然としたたたずまいは、明らかに他の大都会とは異なっており、計画都市であることが一目瞭然だ。今年、遷都から50年目を迎えたブラジリアは、人口280万人の大都市に成長し、押しも押されもせぬブラジルの首都として、堂々と君臨している。

海抜1100メートルにあるブラジリアの年間平均気温は21°Cで、極めて快適である。雨季と乾季がはっきりしており、4月から9月までの乾季にはほとんど雨が降らない。毎年ゴルフトーナメントは、雨の心配の無い乾季の5月に開催される。

メイン大通りは全て立体交差


タクシーは、メイン・アヴェニューからホテルのある南ウイングに向かう。アヴェニューを横切る全ての道路には、鋏の取っ手のような形で、クルリと回って入る立体交差なので、信号機は不在だ。ホテルブロックには、数十棟のホテルがギッシリと軒を並べている。全てのビルは形こそ違え、東西方向に整列して建てられている。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   ブラジルが誇る、天才建築家オスカール・ニーマイヤーによって設計されたブラジリアの主要建築物は、全て型破りで奇抜なものばかりで、見る人に正に未来都市を感じさせる。二枚のお皿を上向けと下向けに並べたような国会議事堂にはじまり、大統領官邸、最高裁判所、中央寺院など、美しい曲線が大胆に使われた幾何学的な建物がずらりと並んでいる。圧巻は、だだっ広い石畳の広場の端に、三つの建物が分散して建てられている三権広場だ。一角にある、高さ100メートルのマストに、280㎡の巨大な緑と黄色の国旗が、大国ブラジルを象徴するように、誇り高く青空に翻っている。ちなみに、マストに掲げられている国旗としては、世界最大であることがギネスブックに登録されている。

カテドラル(中央寺院)の内部から天井を見上げる


ギネス級といえば、8年前の政権交代で、野党から大統領に就任した、ルーラ・ダ・シルバ氏に対する国民の支持率は、常に70%台を維持してきたが、8年目の任期最終年を迎えた現在でも、80%以上を保っている。この間のブラジルの発展、特に経済面での安定は、目覚しいものがある。政治の安定は、リーダーの資質に負うところが大であるとすれば、どこかの国のように、年に3回も首相が替わる国は、何となくヤバい気がしないでもない。2ヵ月後に、新大統領の選挙が実施されるが(大統領選挙は直接投票)、事前調査では、ルーラ氏が推す、同じ労働党のジルマ・フセ女史が、断然優勢で、現政権が継続される可能性が極めて高い。

白亜の檻の中で、玉虫色のステンドグラスに覆われた中央寺院の建物も、驚嘆に値する。外観は、保守的なイメージの教会とはおよそかけはなれたスマートなものであるが、中に入るとたちまち幻想的な雰囲気に包まれ、心身が清められるような感じがする。何とも不思議な建物だ。

JK大橋を望む18番ホール


ブラジリア・ゴルフクラブは、全てのスポーツクラブが集中している、巨大な人口湖、パラノア湖畔の広大な地域の一角にレイアウトされている。政府高官や各国の大使たちが、外来客の接待にも使うブラジリアGCは、アップ・ダウンが少なく、格調高いチャンピオン・コースで、松林がフェアウエイをセパレートしている景観は、どことなく日本のコースに似ている。勝負どころの8番と17番は、それぞれ180ヤード前後ある長めのパー3で、グリーンがパラノア湖に張り出したように設計されており、ドロー系のボールだと、湖に飲み込まれてしまう。ちなみに、17番ホールは、2008年のトーナメントで、同ホールを2打差の首位で迎えた私は、グリーンを直接狙わず、ボギー覚悟でツーオンをするル-ティングを選択し、一打差で優勝することが出来た思い出のホールである。                     (完)    

ブラジリアのレイアウト

    

mshoji について

兵庫県神戸市出身。1960年、県立神戸高校卒業後にブラジルに単身移住。サンパウロ・マッケンジー大学経営学部中退。貿易商社、百貨店でサラリーマンを経験後に独立。保険代理店、旅行社、和食レストランの経営を経て、現在は出版社を経営。ブラジル・サンパウロ州サントス沖グアルジャー島在住。趣味:ゴルフ、乗馬、社交ダンス、カラオケ、読書、料理。twitter:@marcosshoji
カテゴリー: (き)気候が快適, (す)スケールが大きい パーマリンク

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