(21)馬が大好きなブラジル人

乗馬フェスティバルで街中を行進する人馬の群れ

フェスティバルに参加したランチョ・コーベのメンバー

一般的なブラジル人たちの夢は(万国共通であろうが)、先ずマイホームを持つことである。サンパウロやリオ・デ・ジャネイロの様な大都会で、都心に近い住宅街になると、マンションの価格もニューヨークや東京と変わらないくらい高いが、一歩郊外に出ると、もともと国土が広いので、不動産も日本に比較すると格段に安い。

マイホームを取得した人たちの次の夢は、セカンドハウスを持つことだ。そうなると、都会にマイホームを持つ人たちは、海に近い場所にするか、自然に囲まれた山の方がいいか、二者選択をすることになる。

ブラジルは大西洋に沿って、9千キロに及ぶ海岸線を有しているが、内陸部に占める国土の方が圧倒的に広い。車で、海まで2時間で足が届く範囲の街に住んでいる人たちは、セカンドハウスを海辺に求める場合が多いが、それ以上遠くなると、湖のほとりか、山間地帯が選択される。

山間地帯のセカンドハウスは、ドア・ツー・ドアで、車で1~2時間の範囲で、シチオと呼ばれる、2千平米から5千平米の小農園に人気がある。ちなみに、新聞やインターネットの不動産広告のページを開くと、アパート、マンション、一戸建てと同じくらいの数のシチオのオファーがある。

セカンドハウスを手に入れると、週末になると、家族ぐるみでシチオに出かけ、新鮮な空気を目一杯に吸って、都会で溜まった一週間のストレスを解消する。大概、最初は、野菜畑を作ったり、果物の木を植えたりするが、シチオに動物は欠かせない。先ず番犬を飼い、次に新鮮な卵を供給してくれる鶏を飼う。少し余裕ができると、次のステップで、自分と子供たちのために馬を飼うことを考える人たちが多い。

田舎町では、馬を手に入れるのは、飼い犬を探すのと同じように簡単だ。近所には、必ず乗馬の愛好家たちがいて、相談すれば馬を世話してくれるし、インターネットの「馬のマーケット」にアクセスすれば、毎日5千頭を越える馬のオファーが出ている。同じ馬でもピンからキリまであって、安価な馬だと2千レアール(約10万円)くらいで手に入る。競技に出るような血統書付きの馬になると、5万レアール(約250万円)以上する。シチオで乗馬を楽しむためなら、5千レアール(約25万円)程度の予算で、調教されたそこそこの馬が手に入る。

シチオで飼われている乗馬用の馬は、マンガラルガ種といって、ブラジル特産の馬種である。原種はポルトガルから導入されたルジターノ種であるが、広い国土を踏破する長旅に耐えうるように、品種改良が繰り返されて完成した馬種である。速足での歩度が小刻みで、ほとんど振動がないため、乗馬に特別な技術を要しない。経験のない、女性や子供でも、ただ鞍に座っているだけで乗りこなすことができるマンガラルガ種の存在は、乗馬普及の要因になっている。

馬の世話は、犬とそれほど変わらない。先ず裏庭に3x3mの馬小屋を造る。餌は犬猫のペットフードと同じように、30~40キロ単位でバランスのとれた餌が市販されている。あとは馬小屋に水と塩を欠かさず、毎日草を与える必要があるが、シチオに土地があれば放牧してもいいし、市販されている干し草を与えてもいい。

あとは鞍を用意して乗るだけだ。乗る場所には事欠かない。舗装していない、いわゆる田舎道がいくらでもあるので、それぞれ自分たちで、好きなコースを選択して、週末になるとトレッキングを楽しむ。馬を持っている同士が示し合わせて集まり、月に一度のわりで実施する、30キロ~50キロの遠乗りが、また一段と楽しい。馬を並べて小走りで、世間話などしながら、田舎道を行くと、あっという間に10キロくらいは走破できる。途中の茶店で、馬を休ませながら自分たちもビールを飲んだりして、一息いれる。ちなみに乗馬には、飲酒規制はないので、落馬するほど飲まなければ、アルコールはOKだ。

田舎町には、年に何回か行事(宗教的なものが多い)やフェスティバルがあって、そんな時には必ず大々的な馬による行進が行われる。私も家内と牧童たちと一緒に、必ず参加する。人口2千人程度の村でも、フェスティバルともなれば、200~300頭もの馬に乗った老若男女や子供も参加する。一体、どこにこれほど多くの馬がいるのか、不思議に思える程だ。それぞれが、この日のために手入れをした自慢の馬に乗って現れる。堂々たる名馬もいれば、中にはポニーやラバもいる。皆、馬の額や胸、臀部などに飾りを施し、精一杯おめかしして参加する。

町外れの集合場所から、連なって町に向かい、街中の通りを一巡して練り歩く。たくさんの人が道端にあふれ、拍手を送る。騎手たちは、笑顔で投げキッスを送ったりして応える。

このように、農牧畜国ブラジルでは、手軽にマイ・ホースを持ち、馬を日常生活に取り入れている家庭が多い。ブラジルの子供たちは小さいときから馬に接するので、馬を恐れずに親しむ。これがそのまま情操教育につながる。馬は不思議な動物で、自分の上に乗っている人を識別する能力をもっていて、大人が乗るとダダをこねる馬でも、子供が乗ると一変して素直に歩く。

日常生活にレジャーとして親しまれている乗馬以外に、スポーツとしての乗馬も盛んだ。こちらの方は、カントリー・スタイルと、ブリティッシュ・スタイルに大別される。

カントリー・スタイルは、並べたドラムカンの間を全速力で縫って走る競技や、子牛に馬上から飛びついて引き倒す競技、短時間で数頭の牛を囲いに追い込む競技などがあるが、使用される馬は、北米が原産の頑強なクオーター・ホースが主流である。カントリー・スポーツにおける究極の競技は、何と言ってもロデイオで、その激しさと技術の高さには舌を巻く。

一方のブリティッシュ・スタイルは、障碍飛越と馬場馬術が双璧だ。障碍飛越は、世界的にもブラジルが得意とする競技で、オリンピックの大障碍では入賞の常連である。2004年のアテネ五輪では金メダルに輝いた。一方の馬場馬術はというと、世界最高レベルのヨーロッパの水準には及ばないが、パンアメリカン・レベルでは北米、カナダと並んでトップクラスを占めている。いずれも、日本に比べるとはるかにレベルが高いことだけは、間違いないようだ。

フェスティバルのカントリーガール

                           (完)

mshoji について

兵庫県神戸市出身。1960年、県立神戸高校卒業後にブラジルに単身移住。サンパウロ・マッケンジー大学経営学部中退。貿易商社、百貨店でサラリーマンを経験後に独立。保険代理店、旅行社、和食レストランの経営を経て、現在は出版社を経営。ブラジル・サンパウロ州サントス沖グアルジャー島在住。趣味:ゴルフ、乗馬、社交ダンス、カラオケ、読書、料理。twitter:@marcosshoji
カテゴリー: その他、色々, (す)スケールが大きい パーマリンク

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