(13)鳥獣類の楽園・パンタナル大湿原

小さな湖の一つ一つに、無数の魚が閉じ込められている

マッチャンの一撃を食らったワニ君

「ゴツン」という鈍い音がした。

バシャッ」と、大きな水音とともに、2mもある大ワニが水飛沫をあげて水面を飛び上がった。

松本、松尾、八幡 諸君

当のワニ君も驚いたであろうが、もっと驚いたのはガイドさんだった。

「ノン・ポーデッ(駄目)!」と叫んだが、あとの祭りだ。

2007年の4月、元馬術部の同窓生、八幡君、松尾君、松本君の3名が、ブラジルに私を訪ねて来てくれた。イグアスー瀑布、リオデジャネイロを観光したあと、皆でパンタナル大湿原を訪れ、サンフランシスコ河の支流で、小さなボートに分乗し、周遊したときの出来事だ。

ゆったりと流れる河の両岸は、うっそうとした原始林で覆われ、様々な鳥類が飛び交ったり、枝にとまって我々を見つめたりしていた。ボートの前の河面を、何匹ものワニが悠々と横切ってゆく。河辺の砂浜には、ワニたちがのんびりと昼寝をしている。

もう少し近くからワニを見たいという、松本君の要望で、同じボートに乗っていた女性ガイドさんが、櫓を操って岸に近づいた。すると、松本君が突然オールで、水際にいた大きなワニの頭をブッ叩いたのだ。

「マッチャン、なに考えてんのん!」皆がいっせいに松本君を非難する。

「どんな反応をするか、興味があったんや」すまなさそうな、松本君。

「ガイドを10年やっているけど、ワニをオールで叩いた人は初めてだわ!」ガイドさんも、怒るのを通り越して、あきれかえっていた。

パンタナルには、ワニを含めた480種類の爬虫類、1000種類以上の鳥類、約400種類の魚類と300種類を越える哺乳類が生息している。

雨季になると、大湿原の面積は23万km2(日本の本州は22万8千km2)に及ぶ。一年周期で、ゆるやかに展開する水位の増減のために、膨大な種類と量の魚類を育み、その無数の魚たちが、さらに無数の鳥類と動物たちを惹きつけるといった具合で、地球上まれに見る、生命の楽園を形成しており、世界遺産として登録されている。

とにかく鳥が多い。ホテルの前にある大木に、何千羽というインコが群れをなしていて、到着する訪問客を歓迎してくれる。朝、窓を開けると、すぐ前の木の枝にオオハシがとまっていて、鉢合わせしそうになる。前庭の木を見上げると、真っ青なルリコンゴウ・インコの大家族が、おしゃべりをしている。車で、草原に出ると、巨大なコウノトリが、ゆったりと歩をすすめ、森には赤い頭のキツツキが、忙しく木をつついている。

船で河に出ると、漁の達人カワセミが、その技を披露して見せ、河辺には優雅な姿のサギたちが、魚を狙っている。見晴らしのきく枝には、ハヤブサがとまって、周囲を見渡している。夕刻ともなると、家路を急ぐ、数え切れない鳥の群れが、河に沿って空を飛び交う。もう、快挙に暇がないくらい様々な鳥に出会う。

動物もたくさん見ることができる。中でも、ネズミの親分のような、カビバラは、あちこちに数え切れないほどいる。草原ではアリクイがのっそりと現れ、鹿が遠くからこちらを窺っている。河辺には、カワウソの家族が住みついていて忙しく立ち働いている。時折、浅瀬にバクがその雄大な姿を見せる。寝たフリをしたワニたちは、驚異的な俊敏さで魚を捕らえる。運がいいとオンサ(ジャガー)も見ることができる。

また、釣り好きにとって、パンタナルはこたえられない。ピンタード、パクーなど、優に5キロはある魚がどんどんかかる。中でも圧巻はドウラード釣りだ。鮭に似た金色の魚が、針に掛かると水面から2mも、豪快にジャンプする。ピラニアはどこでも釣れるが、スープにするしか食べようがないので、その場で放魚してしまう。

3泊4日の旅で、パンタナルを堪能したあと、元馬術部3名と私は、空路サンパウロに戻った。それから車で70キロの所にある、ランチョ・コーベ(ウチの小牧場)に向かい、そこを拠点にして、乗馬とゴルフに興じ、飯を共に食い、酒を酌み交わして、心ゆくまで歓談した。

卒業から50年近く経っている。お互いに、それぞれの道を歩み、長い人生で、色々なことがあった筈だ。それにしても、ガキの頃のように、会話がはずむのは一体何故なのだろう。まるで、半世紀がタイムスリップしたようだ。人格は18才までに出来上がっており、それからは本質的には変わらない、という説にはうなずける。

雑学の知識がポンポン飛び出す八幡君、温厚で、誰からも好かれる松尾君、いつも、ちょっと控えめな松本君、というか、松本君は、我々が知らなかった意外な面を、いくつか見せてくれた。その一つは、ワニ叩き。次は、4回のゴルフ・バトルでの逆転総合優勝。そして、神高馬術部ではサブだった彼が、大阪市大・馬術部の主将を務め、全国優勝したという話。これには、我々3人は「恐れ入りました」と、互いに顔を見合わせたものだ。

昔に返って、本当に、心から楽しい時を、一緒に過ごさせてもらった。    (完)

                  

mshoji について

兵庫県神戸市出身。1960年、県立神戸高校卒業後にブラジルに単身移住。サンパウロ・マッケンジー大学経営学部中退。貿易商社、百貨店でサラリーマンを経験後に独立。保険代理店、旅行社、和食レストランの経営を経て、現在は出版社を経営。ブラジル・サンパウロ州サントス沖グアルジャー島在住。趣味:ゴルフ、乗馬、社交ダンス、カラオケ、読書、料理。twitter:@marcosshoji
カテゴリー: (き)気候が快適, (す)スケールが大きい パーマリンク

(13)鳥獣類の楽園・パンタナル大湿原 への1件のフィードバック

  1. Daison より:

    生命の宝庫、パンタナール。
    是非一度訪れてみたいものです。
    ワニ、カピバラ等の動物のイメージが強かったのですが、なるほど、鳥がそんなに沢山おるとは存じ上げず。

    そして、何よりも旧友との楽しいひと時。
    温かな時間が流れていたことでしょう。

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